『人を褒める時は、大きな声で』(F・J・ビッテンフェルト)
この言葉を実践して、ちょっとしたうねりを起こしたおばあさんの話です。
「あたしね、いつも本当に良くしてもらっているのよ」
Tさんは、近所のスーパーの店員さん達の気遣いに、いつも感謝していました。
左前腕コーレス骨折の後遺症で、シルバーカーを押し歩くのも大変なTさん。
正直、左手首の動きや握力は、これ以上の改善の余地はありませんでした。
スーパーでの買い物が大好きで、人に料理を作るのが趣味。
そこでシルバーカーが押しやすくなるように、姿勢が良くなるように、肩、腰、膝、そういった方面からのアプローチを続けていました。
スーパーに行くたびに、まるで冬眠するほどに買い物するTさんは、スーパーでも有名人です。
山盛りになった買い物かごを、シルバーカーに乗せ替えてくれるのはいつも店員さん達。
でも決して上客だからって訳ではなく、朗らか、世話焼き、世話焼かれ、自然に周囲に人が集まるような人でした。
「店員さん達に何かお礼をしたいのだけれど、何がいいかしら?」
「んー・・・」
「差し入れをするにも、ねえ?」
「ならば、ですね」
店頭入り口に置いてある、『お客様の声』を提案しました。
「あれを一枚持って帰って書き込んで、入り口の箱に投函するんです」
そうすれば店員さん達の気遣いに、お店の上層部も気付きますしね。
「人を褒める声ってのは、大きいほどいいってもんですよ」
「私、そんなに大きい声は出ないわよ」
笑いながら、納得してくれました。
早速Tさんは当院の帰りがけ、スーパーに寄って、『お客様の声』の記入用紙を持って帰ったそうです。
「表も裏も、全部使っちゃった」そりゃ読む方も大変だ。
そしてそれからしばらく後、話は想像もしない方向に膨らみます。
「店長が感激しちゃって(笑)」
常連さんのスーパー店員さん情報です。
「事務所の壁に貼り出しちゃったの」
「へえぇ」
「しかも、本社でも会議の話題に上がったって」
「それはすごい」
表も裏も、感謝の気持ちを真っ黒に書き込んだ『お客様の声』は、思いもよらぬ所にまで届いたのです。
いかに丁寧に『お客様の声』を拝聴し、それをフィードバック出来るか。
大きい会社ほど大変なはずなのに、なかなかやるなぁ。
「で、店員さん達の待遇、何か変わった?」
「それは全然」店員さんの苦笑い。
まだまだ声量が足りませんかね。
ところで冒頭の言葉には、実は続きがありまして。
『人をけなす時は、より大きな声で』
「あら私、そっちの方が得意よ」
そんな風に笑ったTさんは、今から4年ほど前に亡くなりました。
今でもスーパーの事務所にTさんの『お客様の声』があるかどうかは、わかりません。
でもあのスーパーの店員さん達は、今でも皆さん、気配り上手です。
写真 今でもスーパー入り口にある『お客様の声』記入所
・・・写真撮影、ここまではいいよね? ね?
褒めてるんだからさ! (ツンデレ風)(男がやるな)
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