T君は、声楽家の卵です。
いや正しくは、日本一姿勢の悪い、声楽家の卵です。
よくこんなに猫背で人一倍声が出るよなぁ、そう思います。
肩こり、頭痛、かったるい、が合言葉。
覇気と元気、とは無縁の男子高校生。
しかし声楽家としての才能は、すでに将来を嘱望されています。多分。きっと。さぁ?
触診して、呼吸に伴う肋骨と横隔膜の動きを確認してみます。
・・・吸気時にここまで腹や腰が、前・横・後ろに大きく膨らむ人を、自分は初めて触りました。
なるほど、これは凄い。訓練している人は違うなぁ。
しかし、下部肋骨のバケツハンドルモーションがほとんど見られず、肺を広げるために肩も挙上します。
姿勢が悪いために、本来呼吸に必要ない筋肉までもが動員されているのが原因です。
そりゃあ、肩もこるはずですね。
「いいかT君!」
「はい・・・」
「君の猫背を『機能訓練』で克服すれば!」
「はい・・・」
「体の不調の解消だけでなく!」
「はい・・・」
「きっと声楽のパフォーマンスも向上するぞ!」
「はぁ・・・」
まずは上半身の筋肉で、機能亢進している所を抑制します。
その上で体幹にEMS、ストレッチポールの上で胸郭を開く各種運動です。
「はい、両手をばんざーい!」
うめき声~~~~~~~~~
「ほらドローイン忘れるな!」
うめき声~~~~~~~~~
「息を吐けぇ、止めるなぁ!」
うめき声~~~~~~~~~
気合と根性ってのは、簡単です。
必要な時に、出せばいいんです。
柴千春って偉い人もそう言ってました。
一通り体幹トレーニングが終わった後は、迎えに来たお母さんが驚くぐらい、猫背が解消して身長が伸びていました。
もちろんこの効果は、正直いっときです。
しかし、これがちゃんと本人の身に付けば、この姿勢がやがて本物になります。
それこそが、本当の姿勢矯正の筋道だと思います。
翌日、お母さんがお見えになりました。
「T君はいかがでしたか?」
「あの後、いつもより声が出ていましたよ」
音楽の先生でもあるお母さんの言葉なら、本物ですね。
「ぜひ、継続してやらせたいんですけど・・・」
「けど?」
「今日は全身筋肉痛みたいでして(笑)」
「ありゃま」
やりすぎた? いやいや、まだまだ。
そのうちに慣れるさ。それまで、気合と根性だ!
写真 ストレッチポールを用いた、姿勢矯正体操
追伸 T君の指導先生から最近、姿勢や発声を褒められたみたいで、T君本人のやる気スイッチが入りました。
T君、将来「プロ〇ェッショナル」や「題名の〇い音楽会」に出演したら、ウチのことも宣伝しておくれな。
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